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数値化しないものは進化しない。憶測を止めシミュレーションを始めれば、制作現場は進化する 


押出成形シミュレーション

例えば「金型を設計したり」「成形条件を決めたり」「トラブルの原因と対策を考えたり」など、アイディアはあるけど上手くいく確信が持てない。そんな時の「こうしたらどうだろう?」を、パソコン上で簡単に仮想実験できるのが、シミュレーションソフト「バーチャル押出ラボ」です。
シミュレーションでは様々な温度や押出量、金型形状を短時間でテストする事ができますので、実機を使った成形テストと比べて大幅なコストの削減が可能です。


押出成形シミュレーション

実機によるテストとシミュレーションの最も大きな違いは、樹脂流動の様子を数値化できるという事です。圧力、温度、せん断速度、流速など、流れの全てを数値化することで、金型形状や成形条件の変更の効果を、客観的かつ正確に評価できます。
また特定の成形トラブルの原因パラメータも数値化することで、トラブルの予想と防止が可能です。


押出成形シミュレーション

フィルム成形加工に使用するプラスチック・樹脂材料は「粘性」と「弾性」を併せ持つ「粘弾性体」です。粘弾性体は温度、応力に対する反応が非線形のため、単純に温度を上げるなどしても必ずしも成形不良の解決にはならない事は皆さんも経験されていると思います。そこで登場するのが「シミュレーションソフト」です。
シミュレーションソフトの利点の前に、押出成形とシミュレーションの技術に関する前提と考え方について少し説明しましょう。
キャピラリーレオメーター、回転式レオメーターなどで観察することで、溶融樹脂の挙動を解明し、それを数式に近似する試みが構成方程式です。研究した材料ごとに特性が異なるため研究者により様々な構成方程式が提案されています。さらに、構成方程式は温度の影響を受けるため、温度換算式などのさらなる近似の試みが必要になります。このようにして得られた材料樹脂の基本的な流動特性、溶融特性を押出機、金型、流路などの流動場で展開し、その挙動を計算・予想するのが「流動解析」または「シミュレーション(CAE:コンピュータ エイデッド エンジニアリング)」です。
このような事から次の項目が非常に重要な前提となります。

①使用する材料をよく把握すること。そして、材料情報はできるだけ実成形に近い「速度」「温度」で測定しておくこと。
②シミュレーションによる計算結果がすべてと信じるのではなく、その材料をその流動場に流した時の傾向と考えること。
③シミュレーションソフトウエアはあくまで道具であり、使いこなすのは人間です。シミュレーションの結果と成形の比較を行い、知見を深めて技師、設計者が判断すること。

これらを踏まえていればシミュレーションソフトウエアは多くのトラブルを解決することが出来ます。成形不良を未然に解決し、材料の新用途を開発する夢の道具にもなり得ます。
成形業界を取り巻く経済状況が厳しさを増す中、研究、開発にかける有形、無形のコストの削減は急務です。流動解析をすることにより実際の成形機での検証が短縮ができるのもちろんですが、新人オペレータの研修等に各パラメータの影響力を把握する教育用途での利用する企業も徐々に増えています。これらのことからも今後の成形現場ではシミュレーションが必須のアイテムとなるでしょう。そして、そのシミュレーションソフトの中でも26ヶ国の様々な成形現場に柔軟に対応し、結果を残してきたのが「バーチャル押出ラボシリーズ」なのです。


押出成形シミュレーション

一般的にプラスチック材料は、せん断速度を高める(押出速度を速める)と、粘度が下がるシアシニング性を示します。プラスチック材料は、この特性を利用して様々な成形加工に使用されています。
現在多くの成形現場では、成形が上手くいかない場合は温度を変更するなどの対策がとられまが、これは本当に正しいのでしょうか?正解は材料、成形温度、成形速度次第なのです。


 
押出成形シミュレーション

<図1>せん断粘度比較図

例として〈図1〉はLLDPEとLDPEを比較した粘度図です。
X軸がせん断“速度”、Y軸がせん断“粘度”です。せん断速度が早くなるほど粘度は下がりますが、LLDPEとLDPEではその下がり方が異なる事がわかります。
下がり方の角度を「擬塑性体指数」といい、この曲線が下がらない流体を「線形のニュートン流体」と呼びます。PETなどはニュートン流体に近い挙動を示すので材料選択が大変重要になります。この図から不良の発生している速度域によっては、温度を上げても粘度が下がりませんので、不良対策にならない場合があることがわかります。ここで注目したいのが、この材料を10mm径、150mm長の200℃チューブ状流路に10kg/hで流した時のせん断粘度の差による「圧力損失」。LDPEでは1.39MPa、LLDPEでは4.595MPaなので、押出機のポンプ能力が3.0MPaの場合、LLDPEではこのチューブを200℃、10kg/hで押し出すことが出来ません。このような時に「バーチャル押出ラボシリーズ」を使用すれば流路の圧力損失などを簡単に計算できるのでマニフォールドなどでの流路による損失を回避することが出来ます。
さらに「実際の活用事例」では理論的なことよりも実践的に「バーチャル押出ラボシリーズ」のシミュレーションを利用する利点などを紹介いたします。